音階から紐解くメロディックの定義
melodic death metal, melodic hardcore, melodic metalcore, melodic deathcore
該当ジャンル | メロディックハードコア、メロディックデスメタル、メロディックメタルコア、メロディックパンク 等 |
---|---|
別名・類似ジャンル | 類似:「メロディアス」 |
いつから | 例:1980年前後 |
主な国 | 例:アメリカ、スウェーデン、フィンランド、日本 等 |
メロディックとは何か?
ロック音楽たちの中には、「メロディック」の名のついたサブジャンルが存在します。皆さんの中には、その言葉を「メロディがある」とか「メロディが良い」のように、漠然と捉えている人もいるのではないでしょうか。私もその一人でした(この記事を作るまでは)。
ここでは、本当の意味でのメロディックとは何か?を順に解説していきます。
メロディックのあるジャンル
前述の通り、ロック音楽たちの中には、「メロディック」の名のついたサブジャンルがいくつか存在します。
- ・メロディックハードコア
- ・メロディックデスメタル
- ・メロディックメタルコア/デスコア
- ・メロディックパンク(日本でいうメロコア) 等
どれも人気のあるサブジャンルばかり。参考に、各ジャンルの代表曲をあげてみましょう。
-
参考1:(メロディックハードコア)The Ghost Inside – Chrono
-
参考2:(メロディックデスメタル)In Flames – Take This Life
-
参考3:(メロディックメタルコア/デスコア)Killswitch Engage – The Arms of Sorrow
-
参考4:(メロディックパンク)Bad Religion – Marked
それぞれの音楽で気にいったものがあれば、是非とも掘り下げていろいろな曲を聴いていっていただきたい(ディグってほしい)。それぞれテイストの異なる4ジャンルであり(メロディックデスメタルとメロディックメタルコア/デスコアは近いですが)、一通り聞き流すと混乱するかもしれません。
どれも共通していえることといえば、「メロディがしっかり主張されている」ぐらいでしょうか。どことなく悲しげで、雰囲気の強いメロディが使われている印象です。
きっとこの点が、メロディックを正しく理解する上での手がかりになりそうです。
メロディックとは? -音階から-
[形動]旋律的。音楽的。調子の美しいさま。「メロディックなサウンド」
単に辞書を引くと、メロディックとは「メロディが美しい」のようになる。「旋律」とはメロディのことを指します。
当然これだと解説として不十分なので、まずはメロディについて掘り下げていきましょう。
前述の4ジャンルとも、音階(スケール)としては
あたりをメインに作られています。それぞれの音階については、参考となる別サイトへリンクを貼っておきました。上記テキストをそれぞれクリックしてご参照ください。
ここでいうマイナースケールは、どことなく悲しげな音が含まれる音階のことをさします。メジャースケール(いわゆるドレミファソラシド)と対比して聴くとわかりやすいかと思います。
ちなみに、「メロディックマイナースケールという音階もありますが、こちらは意外にも「メロディック」のロック音楽たちにはあまり使用されていないようでした。
そしてこれらの音階の中でも、9th や♭3rd 、5th 、♭6th 、7th(または♭7th)の音を効果的に、あるいは強調してメロディに取り入れているものが多くありました。
特に 9th と♭3rd 、5th と♭6th 、ルートと 7th は半音階であり、マイナーな(悲しげな)印象を強める音になります。
まとめると、メロディックというジャンルは「マイナースケールの(半)音階を効果的に使った、どこか悲しげなメロディのある音楽」となります。
実際、悲しげというか、ドラマチックというか、感情的というか… そんなメロディですね。
メロディックとは? -メロディックの有無による比較-
もちろん上述でもだいぶ形容できてきたような気がしますが、他のジャンル(メロディックという名の無いもの)と比較することで、明確にメロディックの特徴をつかめるのではないか?と考えてみました。
-
参考5:(メロディックメタルコア/デスコア)Last Day Dream “My Tragic Phantom”
-
参考6:(デスコア)Victim of Deception ‘Suffering’
上に、それぞれのジャンルで日本を代表する2バンドの、代表曲をあげてみました。どちらも殺傷能力の高い楽曲ですね。
デスコアの楽曲は、一般的に半音階や三全音など、恐怖感を煽るような音程、音階を用いていることが多くあります。これはまさにデスメタルの音楽性を継承しています。
途中ギターが単音弾きをしていますが、上述のようなスケールではなく、「フリジアンスケール」というスケールを吸収した、複雑怪奇な旋律になっています。毎秒恐怖を煽るような残虐性が魅力的です。
参考:フリジアンスケール(Phrygian Scale)【エレキギター博士】
一方、メロディックメタルコア/デスコアについては、メロディックデスメタルとメタルコアが合流してできたサブジャンルです。上の楽曲からもわかる通り、ストリングスやギターのメロディがしっかり主張されています。ナチュラルマイナースケールを効果的に用い、ドラマチックな展開となっているのが印象的です。
まとめると、「メロディックを取り入れることで、ドラマチックで流れのある音楽に近づく」となります。
もちろん、どちらが優れているという議論をするべきではありません。どっちも格好いいと思います。大好きです。
ここで伝えたいのは、音階を効果的に使用することで表現が変わるのは興味深い、ということです。
まとめと所感
以上のことから、メロディックなロック音楽というのは「マイナースケールの(半)音階を効果的に使い、流れがあってどこか悲しげなメロディを主張している音楽」ということになります。
なんとなく、わかりやすくなったような(なっていな?ような)…。
所感としては、聴かせたいメロディが悲しげで美しく、聴きごたえが生まれている音楽を「メロディック」と呼んでいるのかな、といったところです。
もちろん、メロディックがあるから良い悪い、という議論ではありません。作りたい音楽をまっすぐ作っているのが一番格好いいです。それがメロディに重きを置いているのか、リズム( djent 的な)や世界観(ゴシックメタル等)など他の部分なのか、バンドによって違うというだけです。
これも所感ですが、途中「流れ」という言葉を用いました。正確には「風」みたいなものとして捉えています。
メロディックな音楽には、「風」が吹くような展開が感じられます。例えば、以下の2曲は、メロディックの熱風がふくメタルコアに感じられます。
-
参考7:Crystal Lake – Lost In Forever
-
参考8:Crystal Lake -Mercury-
ちなみに本人たちは「俺たちなりのメロディックパンク」と言っていました(2019年3月 新木場無料公演より)。感じ方は人それぞれなので、私が思う「風」にピンとこない人もいらっしゃることとは思いますが…