オルタナティブメタルとポストハードコアの接点
alternative metal, post-hardcore
こんにちは。管理人です。この記事では、ポストハードコアとよばれたり、オルタナティブメタルやメタルコアと呼ばれたりする新しい音楽について、ごくごく簡潔に解説していきます。
この記事は「メタルコアのサブジャンルをまとめてみた(後編)」から続いています。こちらの記事もぜひチェックしていってください。
どこにも属さない、新しい音楽
この記事では、よくオルタナティブメタルやポストハードコアに分類されてしまう音楽をまとめてみます。
もともとオルタナティブメタルは、オルタナティブロックの精神とヘヴィメタル的な演奏技法を掛け合わせた音楽として、1980年代中盤に生まれた音楽です。ファンクメタルやニューメタル等の「従来の音楽に囚われない、型破りでオリジナリティのあるメタル音楽」に対して付けられていました。そもそもオルタナティブという言葉については
オルタナティヴ(Alternative)とは、「もうひとつの選択、代わりとなる、代替手段」という意味の英語の形容詞。大手レコード会社主導の商業主義的な産業ロックやポピュラー音楽とは一線を画し、時代の流れに捕われない普遍的な価値を求める精神や、アンダーグラウンドの精神を持つ音楽シーンのことである。イギリス、アメリカだけでなく、世界の多くの国に存在する。
という意味を持っています。流行り廃りに関係なく、自分たちのつくりたい音楽をまっすぐに形にしているのが、オルタナティブの良いところだと私は考えています。ヘヴィメタル界においては、様式美やジャンルなんかに囚われることなく、良いと思ったサウンドや演奏技法等を取り入れていき、独自のヘヴィを作り上げる音楽が、オルタナティブメタルになります。実際、ニューメタルなんかは、様々な音楽から吸収して独自性が高い音楽となっていて、ニューメタルができた当時はヘヴィメタルのファンからあまり認められていませんでした。今はだいぶ認知が広まったと思いますが…
一方で、ポストハードコアは
勃興初期においてはポストパンクやプログレッシブ・ロックの影響を受けた前衛的なハードコアバンドを指す名称であったが、近年では大衆化してきたスクリーモ、メタルコアなどの代替語として用いられることが多く、特に海外でその傾向が強い。
とあるように、もともとはポストロック/ポストパンクをハードコアの世界に入れ込んだ音楽を指す言葉でした。前衛的で幻想的な雰囲気の楽曲もあれば、ノイジーなサウンドを展開するバンドもいました。現在こうした音楽は「ポストパンク」や「インディーロック」として扱われることが多いようです。※1
その後、1990年代のグランジブームが訪れ、既存の音楽概念に囚われない、新しい音楽が誕生していきました。
ポストハードコアも発展し、なかには Sunny Day Real Estate や Jimmy Eat World といったバンドがエモーショナル(感情的)な表現を取り入れたバンドが生まれ、「エモ」「スクリーモ」というサブジャンルとして扱われています。※2
2000年代以降は、ニューメタル等のNWOAHM(New Wave of American Heavy Metal)が到来し、ポストハードコアバンドもこうした音楽と接近していきます。エモーショナルなメロディーを取り入れたり、エレクトロニカやオルタナティブ、メタルコアといった他ジャンルの音楽を吸収することで、真新しいサウンドを持つバンドが急増し、この頃には、1980年代から続く本来のポストハードコアの要素は全くみられなくなりました。メタルコア、ポストハードコア、エモ、スクリーモ、エレクトロニコア…他、それらの境界線はすっかり曖昧です。
2020年現在、「ポストハードコア」という音楽は2000年代以降に栄えた、多様な音楽の要素を混合したバンドたちを指します。既存のジャンルに囚われず、積極的にオリジナリティーを探していった点は、オルタナティブメタルの精神性・音楽性と似ているところがあります。そして、「いろいろ混ぜすぎて結局何者なのかわからない」「イロモノ扱いされる」という欠点も同時に生まれています。
※1envy – Worn heels and the hands we hold
※2Jimmy Eat World – Pain
そんなすてきなバンドたち
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At The Drive In – Governed by Contagions
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Bring Me The Horizon – Shadow Moses
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coldrain – MAYDAY feat. Ryo from Crystal Lake
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We Came As Romans – Cold Like War
オルタナティブメタルとポストハードコアがまったく一緒というわけではありませんが、そのどちらともとれるような音楽を演奏しているバンドは多数います。かっこいいので一部紹介させてください。
彼らはハードコアの持つ攻撃性、ヘヴィメタルの演奏技法、耳に残るメロディー、太い芯のある重低音などを武器に、多くのフォロワーを獲得してきています。もともとはメタルコアを演奏していたバンド、オルタナティブロックから進化してきたバンドなど、それぞれの経歴は異なりますが、様々なジャンルを内包し、間口の広い音楽に発展しているのが特徴です。代表的なバンドとして以下が挙げられます。
- ・Bring Me the Horizon(〜2015年頃)
- ・We Came as Romans
- ・36 Crazyfists
- ・American Standards
- ・Bullet for My Valentine(2015年頃〜)
- ・At the Drive-In
- ・coldrain(2013年頃〜)
- ・a crowd of rebellion
- ・mildrage
- ・Another Story
- … ほか
興味を持ったバンドについては、ぜひ他の楽曲もチェックしてみてください。